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大学別「入試に出た天声人語」

カラスの知恵

一番美しい鳥を、鳥の仲間の王様にすることになった。みんな、川で水を浴びて、身繕いした。カラスだけは、自分が不格好なのを知っていたので、ほかの鳥たちから抜け落ちた羽根を集め、自分の体にきらびやかにまとった▼『イソップ寓話(ぐうわ)集』に登場するこのカラス、結局、王様になれる寸前に、ほかの鳥たちに羽根をはぎとられ、挫折するのだが、なかなかの悪知恵ではある。昔からカラスは、鳥の中ではずば抜けて頭がいい存在として知られていた▼漁港近くの交差点で待ち受けていて、赤信号でとまるトラックの荷台から魚をかすめ取る。クルミを空中から落として割ったり、一時停止の車の前に置いて砕かせたりもする。鳥の観察家、唐沢孝一さんや国松俊英さんらの本には、こうした例がいくつも挙げてある▼カラスには物を隠す習性があるが、ほとんどの場合、その場所をきちんと覚えていて、迷わず取り出すそうだ。隠したえさをあとで食べるときも、腐りやすい順に、たとえばウインナソーセージは先に、クルミは二カ月後にゆっくりと、という具合らしい▼カラスの知能は、石器時代のヒトに匹敵する、という外国人学者の観察結果が発表された。太平洋南西部のニューカレドニア諸島のカラスたちは、枝を折って葉を取り除き、かぎ状にしたり先細りの形にしたりする。その「道具」を使って、土の割れ目にいる虫を捕るそうだ。頭がよすぎて、どこか怖いような話である▼〈カーカーとうるさく鳴くカラスの多さで、きょうがゴミ収集日であることを思い出した〉という主婦の投書が、新聞に載っていた。東京都心のカラスは、この五年で倍増して一万五千羽を超えた。その他の都市でも増え続けている。食べ残し、使い残し。飽食社会の豊富な生ゴミが原因、という。人が襲われる、といったトラブルも増えてきた。

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