ホーム > 大学別「入試に出た天声人語」 > 新しい格差
授業料の免除や給食費の援助を受ける生徒、児童が増えているという。その一方、学費がかさむ私立中の受験が増え、東京では4人に1人が受けたという進学塾の調査もある。新しい格差のようなものが、できつつあるのだろうか▼文部科学省によると、04年度の調査では、全国の都道府県立の高校で11人に1人が授業料の免除や減額を受けていた。地域や学校でかなりの差があるものの、全体の人数は8年で倍増した▼公立の小中学校で、文房具代や給食費、修学旅行などの援助を受けた児童、生徒は、04年度までの4年で4割近く増えた。東京都内には、受給率が7割に達した小学校もある▼その学校で、卒業文集のテーマを「将来の夢」にしようとしたが、3分の1の子が何も書けなかったという。子どもたちが、夢や希望を思い描きにくくなってきているのなら、まことに痛々しい▼作家・村上龍さんは、近未来小説『希望の国のエクソダス』(文芸春秋)の中で、中学生にこう言わせた。「この国には何でもある。本当にいろいろなものがあります。だが、希望だけがない」▼村上さんは、本紙のインタビューには、こう述べている。「子どもは、20年後、30年後の自分の姿を、いまのおとなに見ようとする。親たちの世代は、ちっとも楽しそうじゃない。おとなたちを見ていても希望が持てない」▼その時々の子どもたちは、大人の姿を映してきた。いわば、大人の鏡だ。今、教育の現場に表れている格差のようなものも、大人の世界のそれを映し出している。