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大学別「入試に出た天声人語」

作詞家・阿久悠さん逝く

冬の名曲もあるけれど、亡くなった作詞家の阿久悠さんは「8月の人」だろう。瀬戸内海の淡路島で終戦を迎え、8月15日をつねづね第二の誕生日だと語っていた▼その日の晴れ渡った空を、8歳の阿久さんは、特別の青として覚えていた。あんなに見事な青空は人生で数度の記憶しかない、と回想している(『生きっぱなしの記』)。この日を境に、封印されていたものが一斉に飛び出してきた▼流行歌であり、映画であり、野球だった。「民主主義の三色旗」と阿久さんは呼んだ。なかでも野球には、「神が降りてきた感じ」を受けたという。用具はなく、すべて手作り。毛糸を巻いたボールで熱中した日々は、のちに小説「瀬戸内少年野球団」となって実を結ぶ▼毎年、高校野球の8月を心待ちにした。「球児は甲子園という聖地への巡礼者」と言い、この二十数年、すべての試合を自宅で見た。この間、仕事は入れない。昼は丼ものしか食べなかった。画面から目を離さずに口に運べるからである▼「三色旗」のひとつの流行歌が、本業になった。「UFO」「勝手にしやがれ」「林檎(りんご)殺人事件」……。破天荒ともいえる表現を次々に繰り出した。秘話に類するのだろう、目指したのは「美空ひばりが歌いそうにない歌」だったという。ひばりとは同い年。畏怖(いふ)や意地など、ないまぜな思いがあったようだ▼だが彼女の死後は、それを悔やんだ。阿久さんは自著で、一番の心残りを「美空ひばりのために歴史的な詞を提供できなかったこと」とつづっている。

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