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大学別「入試に出た天声人語」

夏服の男たち

ビジネスマンの結ぶネクタイを、武士の刀にたとえた人がいる。ぶら下げるだけで、たたずまいが威厳と緊張感を帯びるからだ。少々くたびれた風体でも、まずはサマになる。そんなところも似ているという▼けさ、いつものようにネクタイを結ぼうとして、手を止めた人もいるだろう。政府が音頭をとって、クールビズに衣替えする初日である。閣議で各大臣は、沖縄の夏用のシャツ「かりゆしウエア」を着用するそうだ▼早いもので3年目になる。最初の年は、言葉が先行する中で、とりあえずネクタイを外した。その姿は「朝帰り」などと冷評された。去年はおしゃれ指南も進んだ。今年は、ピンやカフスも使いこなす「上級者の装い」が百貨店の売りになっているという。歩く人が多くなれば、道はできていくものだ▼みんなで外せばこわくない――。相変わらずの横並びを揶揄(やゆ)する声も聞く。とはいえ、襟元が涼しくなれば冷房の温度を高く設定できる。環境省の推計によれば、昨夏は約250万世帯の1カ月分にあたるCO2を削減したという▼高温多湿の夏に、日本人は悩まされてきた。「家の作りようは、夏をむねとすべし」と、「徒然草」の兼好法師も古くに述べている。当時の冬は寒かっただろうに、「冬は何とでもなる」と、法師はかたくなに夏の暑さを嫌った▼この夏は、赤道域の海面水温が低くなる「ラニーニャ現象」で、猛暑と渇水が心配な夏になりそうだという。武士のやせ我慢はかなぐり捨てて、温暖化の防止に心したい。

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