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大学別「入試に出た天声人語」

中国のナマコ人気

南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島は、中国やベトナムなどが領有を主張して、紛争の海と呼ばれてきた。中国がこだわるのは、ここで高級食材の「ツバメの巣」がとれるからだと聞いたことがある▼真偽のほどは知らない。だが、海底資源より珍味が大事と、もっともらしく語られるのは、かの国の「食」への情熱のゆえだろう。足が4本のものは机以外、飛ぶものは飛行機以外なんでも食べる。そんな冗談もある中国でいま、日本産のナマコが大人気らしい▼たとえば、北京にある名店では、たっぷりのネギと香味野菜でナマコを煮込んだ料理が評判だ。中国通の同僚によれば、ナマコは客が自分で見て選ぶ。産地、等級別にずらりと並んでいて、最高級に日本からの輸入ものが鎮座している。それを、富裕層がこぞって指名する▼精がついて美容にもいいから、姿かたちは不気味でも値段は跳ねる。乾燥ものの日本からの輸出価格は、ここ5年で5倍ほどに高騰したらしい。うまい儲(もう)けに密漁船も暗躍する。生態がよく分からないため、取り尽くす心配も出てきているようだ▼〈何の故に恐縮したる生海鼠(なまこ)哉(かな)〉と漱石は、寡黙でつましい生き物を詠んだ。日本では料理でも地味な脇役だ。せいぜい酢ナマコか、このわたか。大陸へ渡ってひと花咲かせたような人気ぶりは、こちらのファンには少し寂しくもあろう▼旬は冬。「きわめて冷潔、淡美。肴品中の最も佳(よ)いもの」と江戸の『本朝食鑑』も讃(たた)える。少しナマコを見直して、食わず嫌いを改めるもよし。

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