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大学別「入試に出た天声人語」

障害者の「旅の権利」

京都に住む岡村美弥子さんは1日に3千歩しか歩けない。重さ2キロ以上のものは持ち運びできない。スーツケースなどは、一瞬たりとも持てない。階段は大の苦手だ。それでも毎年のように1人で海外に出かける▼股関節の病気で、右足に人工関節を入れたのは40代だった6年前だ。そのころ旅行会社で添乗員などの仕事をしていた。旅の仕事はできなくなったが、遊びでは行けるはずだ。そう思って工夫をこらす▼スーツケースは自宅からタクシーの運転手に運び出してもらう。空港では台車につかまって歩く。到着地にタラップがありそうなら、リフト車で降ろしてくれるよう頼んでおく。ホテルの部屋では、開け閉めしやすいようにスーツケースを置いてもらう▼「かつて障害のある人の海外旅行は冒険だった。今は、行けるところではなく行きたいところへ、と望む人も多くなった」と言うのはJTMバリアフリー研究所の草薙威一郎さんだ。空港や駅が使いやすくなり、航空会社や旅行会社の受け入れ態勢もかなり整ってきたという▼「すべての人には旅をする権利がある」と政府の観光政策審議会が提言したのは10年前だった。「旅をする自由はとりわけ障害者や高齢者など行動に不自由のある人々にも貴重」と述べていた。障害の種類や度合いによって違いはあるだろうが、やっと「旅の権利」が現実のものになりつつあるということか▼岡村さんはこの夏、モンゴルに行こうかどうか迷っている。「郊外への道が悪いと、人工関節がもたない。その見きわめが欠かせないのです」

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