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大学別「入試に出た天声人語」

大切な人間関係

サンフランシスコのゴールデンゲート橋は、自殺者が多いことでも有名だ。3キロ近い長さの美しい橋。中央部の高さは海面から70メートルもある。太平洋に向かって飛び降りても、内陸部の側に飛び降りても、死ぬ▼ところが、外海に向かって飛び降りる人はいないそうだ。みんな陸の方を向いて飛び降りる。「死ぬ瞬間まで現世に未練を残している」からだ、というロサンゼルス自殺予防センターのシュナイドマン博士の言葉を、精神医学者の大原健士郎さんが書いていた▼自殺は極端な場合だが、普段の生活でも私たちは孤独の海より人里の方に体を向け、人の支えに頼って生きることが多いような気がする。全く人の支えを受けぬ生活というものがあるだろうか。想像するのも難しい▼浦 光博著『支えあう人と人』には、人間の結びつきについての様々な社会心理学の研究が紹介されている。環境の変化にうまく適応するのに、また、ストレスを克服するのに、人はどういう人間関係を持つのが望ましいか▼看護婦や教師など、人間を対象に仕事をしている人々の「燃えつき症候群」、つまり極度の疲労と感情枯渇に、人の支えはどう作用するか。上司、同僚、友人、家族など、支える人々。そして具体的な資源や情報を提供する支え方。情緒的に支えるやり方▼どんな場合にも人の支えがいかに大切かを、研究は実感させる。親密な人間関係にあっては、不安を話し合うより、かえって何げない日ごろのつきあいの方が大事だ、という指摘もある。こういう研究が盛んなのは、不安と緊張の多い現代の反映だろう▼さくら総合研究所が全国各地、各企業の新入社員に「社会人になって一番期待していることは」と聞いた。「新しい出会いがある」という答えが男性で1位、女性で2位だった。勤め先でも学校でも、新しい、大切な人間関係を築く季節だ。

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