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大学別「入試に出た天声人語」

水の大切さ、忘れてはいけない

加藤楸邨(しゅうそん)に〈水売(みずうり)や暑さたとへば雲のごと〉という句がある。ミネラルウオーターが冬でもよく売れるようになったのは、ここ10年ほどのことだという。昨年は国産と輸入をあわせ、2リットルのペットボトルにして全国でざっと10億本分が消費された▼ミネラルウオーターが日本の家庭に急速に広がったきっかけは、82年に飲料容器にペットボトルが認可されたことだった。それから四半世紀で、この浸透ぶりはめざましい▼水道の蛇口をひねれば飲める水が出る。それが日本の良さの一つだろう。なのに都会の水は清潔であっても、あまりにまずくなった。リサイクルが難しいペットボトルには抵抗感もあったが、ついに手を伸ばし、「カネで水を買う時代になったか」と敗北感にも似た気分を味わったのはいつだったか▼映画『硫黄島からの手紙』で印象深かったのは、兵士たちが米軍だけではなく、水とも戦っていたことだ。総指揮官の栗林忠道中将は家族への手紙で、渇水のつらさを何度も訴えている。「湧水(わきみず)は全くなく、全部雨水を溜(た)めて使います。それですからいつも、ああツメたい水を飲みたいなあと思いますが、どうにもなりません」(梯<かけはし>久美子『散るぞ悲しき』新潮社)▼水との戦いは過ぎ去った話ではない。ユニセフによると、安全でない水が原因で命を失う幼児は世界で年に約180万人にのぼるという。水くみに追われ、学校に通えない子供たちも数多い▼水の豊かな国に住み、世界各地の水を消費する。そんな私たちだからこそ、水の大切さを忘れたくない。

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