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大学別「入試に出た天声人語」

最も報じられなかった10の人道的危機

どんなに悲惨なことが起きていても、メディアで報じられない限り、世界の多くの人々にとってはないに等しい。助けも届かない▼NPOの「国境なき医師団」が「06年、最も報じられなかった10の人道的危機」を挙げている。まず、毎年何百万もの命を奪っている結核、栄養失調がある。それに、人々を生命の危機と恐怖に陥れているスリランカ、中央アフリカ、ハイチなど八つの国での紛争を加えた▼米国の3大テレビネットワークの夜のニュースは昨年、このうち5カ国での紛争は全く取り上げず、残りも合わせて7・2分間報じただけという。まさに忘れられた危機だ。栄養失調の新しい治療食ができても、やせ衰えた子供たちに届かない▼英国BBCテレビの記者が報道の量に関して調べた興味深い結果がある。健康へのリスクなどについてのBBCニュースの1年間の本数で、そのリスクによると見られる年間の死者数を割り、記事1本あたりの死者数を概算した。多いほど、危険の割に報道が少ないことになる▼筆頭は喫煙で約8600人、次が肥満で約7500人だった。牛海綿状脳症(BSE)に感染した牛肉を食べることによる変異型クロイツフェルトヤコブ病は0・5人、エイズは20人だった。喫煙や肥満はBSEに比べるとニュースになりにくい。しかし、健康への影響を考えれば、もっと報じられていい、というのが結論だった▼人々の命を脅かすものに対して、メディアは常に敏感であらねば。声なき声を、ニュースを追う者にとっての戒めと受け止めたい。

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