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大学別「入試に出た天声人語」

女子少年院のオペレッタ

仙台市の青葉女子学園は、全国に9カ所ある女子少年院の一つだ。毎年春になると、創作オペレッタの準備にかかる。手作りの音楽劇である▼教官が漢字1字のテーマを与える。昨年は「今」だった。それをもとに約20人の少女たちが手分けして脚本や歌をつくる。目標を持てない少女と、不満や不安、不幸を抱える四季の妖精たちが出会い、それぞれが生きる力を取り戻す物語に仕上がった。6月の学園祭で保護者らを招いて上演された▼そうした20年にわたる営みが、今年度の人事院総裁賞に選ばれた。公務員の地道な活動に贈られる賞だが、今回の主役はむしろ少女たちだ。ピアノの伴奏もする教官の北村信子さんは「私たちの仕事は彼女たちの力を引き出し、支えることです」と語る▼覚せい剤や傷害、盗みなど非行の内容は様々だが、だれもが心に深い傷を負っている。それが歌やせりふから伝わってくる。「なんでこんなにつらいの。なんで私だけこんな思いをしなきゃいけないの」「素直でいたい。だけどうまくいかない」「私なんて、いない方がいいんだ。必要のない存在で終わってしまうんだから」▼それでも最後は、「信じる心、胸に、今未来へ旅立とう」と歌う。出演者も合唱隊もみんな涙ぐんだという▼少女の一人はこんな話をしてくれた。「夢があるからがんばれる。私には大切にしたい人がいる。そうしたせりふで、自分の気持ちを客席の親に初めて伝えることができた」。そして、「みんなでつくり、励まし支え合ったのも、初めての体験でした」。

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