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大学別「入試に出た天声人語」

かば園長

葬儀場の最寄りの駅に、道案内の看板があった。普通は「××家式場」などとあるものだが、「かば園長葬儀式場」と書かれていた▼埼玉県宮代町にある東武動物公園の初代園長を務めた西山登志雄さんが亡くなった。77歳だった。式場にはカバがあふれ返っていた。巨大な銅像や置物、ぬいぐるみ……。祭壇にも花を使ってカバの絵が描かれていた。「ぼくはカバが大好きである。カバもぼくが好きである」。そう言っていた西山さんらしい、前代未聞の葬儀だった▼戦争直後の46年、16歳で飼育係として上野動物園に入った。以来、カバを始め様々な動物を育ててきた。70年代には、西山さんを主人公にした漫画が少年誌に連載された▼『ぼくの動物園日記』(作・飯森広一、集英社)を読んで、動物が好きになった子どもはたくさんいるのではなかろうか。最近、別の出版社から復刻版も出版された。飼育係になりたての西山少年が、母を亡くしたサルやカバたちに愛情と熱意を持って接していく、心温まる漫画だ▼人間と動物を結ぶ通訳として、動物の思いを伝えた著書も多数ある。「どうしたら動物と仲良くなれるかと悪戦苦闘するうちに、かれらのあまりのすばらしさに、いつか動物の側に立ってものを考えるのが習性になってしまった」(『動物賛歌』新日本出版社)▼西山さんが上野から転じた東武動物公園には、ズーという名のカバがいる。オスで32歳。開園以来、ここに住む人気者だ。西山さんを送る日、濁った水の中をズーはゆったり気持ちよさそうに泳いでいた。

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