ホーム > 大学別「入試に出た天声人語」 > 身体障害者補助犬法施行から4年
車いすで一人暮らしの塚本喜英(きえ)さん(62)は、介助犬のジッピーを「うちの次男坊」と呼ぶ。「テーク電話」と指示すれば、電話の子機をくわえてくる。「ギブ」で、手元に置いてくれる▼東京都豊島区で薬局を営んでいた11年前、自転車に乗っていて車にはねられた。頸髄(けいずい)を傷つけ、首から下がほとんど動かなくなった▼知り合いになった訓練士から介助犬との暮らしを勧められた時、ためらった。自分で散歩に連れて行けず、食事を与えることも排泄(はいせつ)の処理もできないからだ。しかし、そうした世話は友人やボランティアの人たちが引き受けてくれた▼03年にやって来たラブラドルレトリーバーがジッピーだった。いま体重33キロ、6歳になる。塚本さんはジッピーの役割を「すき間仕事だが、なくてはならないもの」と語る。障害のない人にとっては床に落ちた物を拾うのは何でもないことだが、車いすの塚本さんはだれかの助けを借りねばならない。ジッピーなら、そばで遊んだり、まどろんだりしているので、いつでも気兼ねなく頼める▼身体障害者補助犬法が施行され、今月で4年になる。公共施設や飲食店、スーパーなどは介助犬や聴導犬、盲導犬の受け入れを義務づけられている。「法律が知られるようになったのでしょう。拒まれることは少なくなった」▼塚本さんはしばしばジッピーと一緒に小中学校に招かれ、生活ぶりを話す。ある小学校では話を聴いた子どもたちが近所の店を回り、「補助犬同伴可」のシールを張るよう頼んでくれた。そうしたことがとてもうれしい。