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大学別「入試に出た天声人語」

映画の著作権と「美しい嘘」

ドイツの劇作家ブレヒトは、ナチス時代に北欧や米国に亡命した。「ハリウッド」という詩がある。「毎朝、パンをかせぎに/市場へいくと買われるのは虚偽/売り手にまじってならぶ私は/希望に満ちて」(『ブレヒトの詩』河出書房新社)▼映画監督フリッツ・ラングも、ナチス時代にドイツから米国に渡り、ハリウッドで撮影した。戦後、彼はゴダール監督の『軽蔑(けいべつ)』に出て、ブレヒトの「ハリウッド」を口ずさんだ。「嘘(うそ)を売っている市場……」となっていた▼欧州からの皮肉な視線を感じるが、作り物を嘘というなら、これほど大きな価値を生む嘘の世界も無い。監督や俳優は腕によりをかけて嘘をつくり、数限りない嘘を人々は喜んで受け入れた▼近年はテレビに取って代わられたが、日本でテレビの本放送が始まった53年といえば、まだ映画が全盛だった。「ローマの休日」や「シェーン」が公開された。ヒット作が多いこの年公開の作品に、改正された著作権法が適用されるのか――。米国の映画会社が「ローマの休日」などの格安DVDの販売差し止めを求めた仮処分申請で、東京地裁は申請を却下する決定をした▼04年1月1日施行の改正で、保護期間は50年から70年に延びた。原告は、公開から50年の終わりの03年12月31日午後12時は、04年1月1日午前0時と「接着」していると主張した。地裁は、保護の基本単位は時間ではなく「日」であり、03年の大晦日(おおみそか)で著作権は消滅したと判断した▼著作権の保護には限りがある。しかし「美しい嘘」の輝きに、限りはない。

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