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大学別「入試に出た天声人語」

帰国子女の心から学ぶ

30年以上前のことだが、通っていた中学校に米国から日本人の女生徒が転校してきた。英語はもちろん完璧(かんぺき)で、2カ国語を滑らかに話すバイリンガルに会ったのは、初めてだった▼「これが本場の英語か」と驚いた。ところが、休み時間になると、その子が1人の同級生に「○○ちゃん、久しぶりね」と話しかけている。2人は数年前、米東部の日本語補習校で同窓だったという▼だが、もう1人の子は米国帰りの経験はおくびにも出さず、英語の時間にはわざとカタカナ発音で読んでいた。同質性を重んじる日本社会では目立ってはいけないという処世術だったのかもしれない▼帰国子女が増えた今は、どうだろう。バイリンガルは、英語と日本語を自由に行き来できると思われがちだ。幼児英語ブームや、小学校から英語を教えるのも、バイリンガルへのあこがれが背景にあるからではないか。だが、そんな単純な話ではないようだ▼英語学習者向けの週刊紙「朝日ウイークリー」(6月25日号)が彼らのホンネを座談会で特集している。自分がどちらの国の人間なのかアイデンティティーに迷う。英語では明るくオープンなのに、日本語では別人格になる。帰国子女は日本の会社では使えない、という先入観にも直面する。悩みは尽きない▼しかし、複数の言語と文化に触れた経験から、「たぶんどの国に行っても、その国を理解しようという許容範囲が広いと思う」(英字紙記者)という面もある。外国語の能力よりも、そうした心の柔軟さこそ、彼らから学ぶべき点かもしれない。

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