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大学別「入試に出た天声人語」

プロ野球・金本選手の世界記録

ここ20年ばかり、病気で仕事を休んだという記憶がない。それが、今年1月に崩れた。せきが止まらず、熱は39度近くある。インフルエンザの検査をした医師が言った。「A型です。仕事は無理でしょう」▼たまたまその日は、前夜からこの欄のテーマと素材には見当がついていたので同僚に代わってもらい、ファクスで原稿を点検した。もし無理を押して執筆していたら、倒れていたかも知れない▼阪神の金本知憲選手なら、そんな状態でも仕事を続けただろう。左手首に死球を受け、後に骨折と分かる傷を負っても出場し、右腕一本で2安打したこともある。危機的な場面を鍛え抜いた体と気迫で乗り越え、見事に904試合連続フルイニング出場という大きな記録をつくった▼大リーグで、ルー・ゲーリッグの2130という連続試合出場記録を超えた日に、カル・リプケン選手は述べたという。「私は、精神的にも肉体的にも、皆さんがおっしゃるような鉄人やスーパーマンではありません。私の野球人生が、たまたまこうなるよう、物事がうまく噛(か)み合った結果です」(『カル・リプケン物語』ベースボール・マガジン社)▼リプケン氏は「立派に野球に取り組んだ結果です。大いに誇りにしてください」と、金本選手をたたえた。「全身全霊をかけ、骨身を削って、チームのため、ファンのために頑張ることを誓います」と金本選手は述べた▼一日一日の仕事の積み重ねが大記録を生み、見る者をも励ます。日米の鉄人の控えめな言葉が、記録の重さを一層際だたせている。

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