ホーム > 大学別「入試に出た天声人語」 > ラファエロ、「先輩」との幸せな出会い
歴史ある町で古い橋を渡る時、これまでに行き交った人々の足音を聞くような思いがする。イタリアの古都フィレンツェで、「古い」橋を意味するベッキオ橋に立ち、ざっと500年前のルネサンス期を代表する3人の姿を想像したことがあった▼「一五〇四年秋、二一歳のラファエッロが青雲の志を抱いてフィレンツェを訪れたとき、五二歳のレオナルドは『モナ・リザ』に霊筆をふるい、三〇歳になんなんとするミケランジェロは巨像『ダヴィデ』を仕上げたところであった」(佐々木英也監修『NHKフィレンツェ・ルネサンス』)。ラファエロは2人の巨匠の作品に学び、優美で流麗な独自の作風をつくり上げてゆく▼ラファエロは1483年の今日4月6日、中部イタリアのウルビーノに画家の子として生まれた。今、町には「ラファエロの生家」という建物がある。部屋が連なっていて日本なら邸宅の部類だ。絵の具を調合したという石の台や古びた井戸もあり、幼いころの画家に思いをはせることができる▼フィレンツェで開花したラファエロは法王庁に認められ、バチカンの壁画も描いた。「アテネの学堂」という絵では、ギリシャの哲学者らの群像の中にレオナルドとミケランジェロの肖像を描き入れた▼彼自身は隅の方につつましげに顔をのぞかせている。「先輩」の技を学び、あるいは盗んで大成したことを感謝しているかのようだ。新年度が始まった日本でも、そんな幸せな出会いが多くあるといい▼1520年の誕生日にあたる4月6日、37歳で他界した。