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「2カ国語を滑らかに話せる人をバイリンガル、多くの言葉が出来る人をマルチリンガルと言う。では、1カ国語しかできない人は」▼最近、取材で会った米国人に問いかけられた謎かけだ。正解はアメリカン(米国人)である。英語がどこでも通じると思い、外国語を学ぼうとしない米国人の驕(おご)りをちくりと刺す冗談だ。一方、日本人は、外国語学習には熱心な方だ。本屋をのぞくと、新学期を前にNHKの英語テキストが山積みされている▼テレビとラジオで計13種類もある。学生時代に世話になったが、ずいぶんと増えたものだ。付属教材のCDもあるし、タイマー録音もできる。眠い目をこすりながら、早朝のラジオに耳を傾ける必要もない▼戦後まもなく英語講座を担当した故小川芳男・元東京外語大学長は、生放送だったため、毎朝4時に起きて、始発電車で放送局に向かった。教える方も教えられる方も、一発勝負だった▼語学の天才と言えば、19世紀にトロイの遺跡を発掘したドイツ人のシュリーマンが有名だ。生涯に十数カ国語をマスターし、欧州の現代語ならば6週間以上はかからなかった。こつは、寸暇を惜しんで愚直に文章を暗唱することだった。英国国教会の説教を口まねして、英語の発音を習得した。教材があふれて迷う時代は、逆に不幸なのだろう▼外国語は難しい。しかし、それは、自分たちと違うものの見方や感じ方を知る苦労でもある。グローバリゼーションが文明間の対立を招く今のような世界をみると、その労を惜しんではいけないと思う。