ホーム > 大学別「入試に出た天声人語」 > 青年海外協力隊が来年創設40年
マーシャル諸島の人たちは、落ち葉や雑草の掃除はよくするという。しかし缶、瓶やプラスチック容器、発泡スチロールなどの清掃はあまりしない。昔ながらの「ゴミ」とは思えないらしい▼ある青年海外協力隊員の報告である。ささいなことのようだが、現地で環境教育に取り組む隊員にとっては深刻な問題に映る。文化や生活習慣の違いとわかっていても、つい「日本に比べて意識が低い」といらだってしまう▼村落開発普及員としてネパールに行った隊員は酒に酔った現地の若者にからまれてけんかをしてしまった。「あなたたちのために正しいことをしているのに、邪魔をするとは何事だ」。隊員は、そんな不遜(ふそん)な気持ちがあったことを素直に反省している▼事務局が集めた体験記には、成功例とともに困惑や挫折、反省の例も収められる。異文化の地で若者たちは苦闘している。成功例も種々の失敗を乗り越えてのことであることがうかがえる▼隊員の実情を調査したことのある文化人類学者の中根千枝さんがかつてこんな指摘をした。がんばりすぎると落胆や不満も大きくなる。適応が遅い人の方が、異文化理解が深くなる例が少なくない。厳しい環境の下では、学歴や職業と関係なく、個人の全人格的能力がおのずと現れる(『日本人の可能性と限界』講談社)▼途上国の発展に協力しながら、異文化に触れることで自分も変わっていく経験ができる。来年創設40年を迎える協力隊はこれまでに約2万6千人を海外に送り出した。昨日から、新しく派遣する隊員の募集が始まった。