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『朝日新聞』06年1月9日付 「社説」より上映中のベルギー映画「ある子供」が話題になっている。
主人公は20歳の若者だ。職がなく、ひったくりをしている。そのあげく、18歳の彼女が産んだ赤ちゃんを売り飛ばしてしまう。ショックで倒れる彼女。それを見て初めて自分のしたことに気づく。
劇場は若者が目立つ。「自分をドキュメンタリーに撮られたみたいだ」という感想も配給会社に寄せられたそうだ。
ベルギーほどではないが、日本でも若者の失業率は約8%にのぼる。各世代の平均の倍近い。企業は正社員を抑え、パートや派遣社員をふやしてきた。最もしわ寄せを受けたのは若者たちだ。
まさか子供を売ろうとはしないだろうが、映画館にやって来た若者たちを見ていると、社会の入り口で意欲をくじかれているのではないかと思う。
少し景気が上向いたとはいえ、「勝ち組・負け組」というような言葉がはやる異常な世の中である。そんな社会に背を向けたい気持ちも分かる。
でも、傷つくことを恐れ、いつまでも自分の殻にこもっているわけにはいくまい。
映画は重いシーンの連続だが、後半、主人公が動きだす。彼女や仲間の信頼を取り戻そうと罪を告白し、進んで試練を引き受けようとする。こうして彼は20歳の子供から大人になっていく。
若者に仕事を与えない社会に怒りながら、若者の行動に希望を託す。それが監督のメッセージだろう。
名古屋市で、NPOに就職するためのセミナーを見る機会があった。
女子大在学中にお年寄り向けにパソコンの家庭教師を始めて、NPOとして起業した2人の若い女性が体験を話した。「無理に就職して自分に合っていないと悩むより、職場を自分で作ってしまったらどうですか」
NPOは福祉、国際協力、まちづくりなどさまざまな分野に広がっている。年収は300万円にもならない職場が多い。それでも、いまや全国で12万人が働いている。そこに飛び込んでもいいし、自分で新たにこしらえてもいい。
人口200人の超ミニ村として知られた愛知県の旧富山村では、沖縄からボランティアに来て住みついたという32歳の女性に会った。
大学3年の時、「あなたの1年をかけてみよう」というポスターにひかれ、応募したのがきっかけだ。「楽しいことばかりではなかったが、自分の中で何かが変わった」。村で結婚し、今は福祉施設で働く。沖縄から出たことがなかった女性が、何千キロも離れた山村でかけがえのない人材になっている。
書を捨てよ、町へ出よう。劇作家の故寺山修司は若者にこう呼びかけた。
ちょっと勇気を出し、知らない世界をのぞいてみよう。からだを思い切り動かして働いてみたらどうか。他人と付き合ってみるだけでもいい。失敗したら、やり直せばいい。時間はたっぷりある。