ホーム > 大ヒ熊教授の実力テスト > クマでもわかる!小論文講座 > 地球温暖化対策として環境税を課すことについて
『朝日新聞』05年11月8日付 「社説」より環境省が昨年に続き、環境税の具体案をまとめた。燃料から出る二酸化炭素の量に応じてかけるもので、炭素税とも呼ばれている。
環境省や農林水産省は「京都議定書の達成に必要だ」とするが、行く手には多くの壁が立ちはだかっている。経済産業省や日本経団連は「増税なしでも達成できる」「景気に悪影響を与える」と猛反対だ。去年は政府内の足並みがそろわず、先送りされている。
環境省案は、こうした反発に配慮した内容だ。ガソリンは1リットルあたり1.52円で、税率にすると1%強。軽油や電気、灯油も1%台と低く抑えている。そのうえ、最近の原油高を考えて、当面はガソリンと軽油については免除する。電気やガス、灯油などを使う標準的な家計で月180円の負担になるという。
この環境税で見込まれる税収は3700億円でその全額を森林の管理や自然エネルギーの普及、住宅・ビルの省エネ化など温暖化対策に充てる。
理想的な環境税をいえば、高い税率で消費そのものを減らすとともに、燃料ごとに税率を変えることで二酸化炭素の少ない燃料に誘導するものだ。
現実には、そんな新税は望むべくもない。当面、広く薄くかけたうえ、その税収を温暖化対策に使うのも一策だろう。とはいえ、妥協にも限度というものがある。ガソリンや軽油を免除するのは納得できない。
環境税には、国民が負担感を覚えることで温暖化防止を考えさせる「アナウンス効果」も期待されている。自動車に使うガソリンや軽油を外しては、この効果は期待薄だ。
環境省には焦りがあるのではないか。消費税の引き上げ論議が遠からず始まる。京都議定書で約束した削減の時期は08年から始まる。原油高のなかで、新たな増税は言い出しにくい。そんななかで枠組みだけでも何とか整えたい、との思いだろう。
しかし、税率にしても、課税対象にしても、国民がほとんど気付かないような税制では、新税を軸に温暖化対策を進めることなどは望むべくもない。環境省は妥協の道ばかりを探すのでなく、政府全体を巻き込み、実効の上がる税制に向けて知恵を絞るべきだろう。
車や燃料から確保する道路特定財源のうち、ガソリン税など燃料税の一部を組み替える提案をしてはどうか。二酸化炭素の排出量に応じた税にするのである。
欧州の主要国はすでに環境税を導入している。かなり高率だが、税収の多くは企業が払う社会保険料の軽減などに回し、産業界が心配する景気への打撃を和らげる工夫をこらしている。こうした方法も選択肢の一つだろう。
環境税が生まれるかどうかは、最終的には国民の支持で決まる。環境省が忘れてならないのは、反対派への妥協よりも、多くの人の理解を得る制度は何かということだ。